
サザンツリー(SOUTHEN TREE)の製造工程を説明したいと思います。無垢の木がどのような工程を経て形になっていくのかは、普通はあまり知る機会がありません。
大量生産品ではなく、一からオーダーメードの家具を作るためにはこれだけの工数があります。
これらの手順をひとつひとつきちんと作り上げていくことが、「職人」の仕事です。
桜のローテーブルでの製造工程を紹介しましょう。
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北海道産の桜です。加工する前はこんな状態です。この状態では何の木か判りません。
ただ、材木屋さんはこういう状態の方がよく判るようです。
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木の端には砂などを噛んでいるので機械に通すと刃こぼれの原因になるのでまず最初に切り落とします。
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余裕を持って長さを切りそろえます。
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幅も大きめに揃えます。
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手押し鉋盤でねじれや反りをとるために削りこみます。写真は、削る前の木肌です。
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削った後の木肌。美しい……。正真正銘の本桜です。
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片面のねじれや反りをとり、まっ平らになったら反対の面を削り厚みを揃えます。
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全ての板の厚みを揃えたら、木目の方向や見た目の美しさを考え接ぎ合わせる板の組み合わせを決めます。脚立に乗って上から見たり、横から見たり……。かなり迷うところです。
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サザンツリーでの板の接ぎ合わせは雇い実かビスケットジョイントです。写真のような薄っぺらい溝を専用の機械で開けその中に葉っぱのような形のビスケットを入れます。ボンドの水分でビスケットが膨らみ強力に接着できます。
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ビスケットを入れてボンドを塗ってクランプで圧着します。
次の日まで乾燥を待ちます。
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若干の段差(目地)が生じるので鉋で平らにしていきます。
なかなか刃いっぱいの鉋屑はでませんね。難しい……。
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次の日に加工する足の部分の板を作っておきます。
接ぎ合わせはビスケットです。
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サザンツリーでの天板の反り止めは必ず吸い付き蟻桟にします。
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ルーターで蟻の溝を加工します。修業時代はこの溝を鑿(のみ)で彫りました。もしルーター壊れても大丈夫ですね(多分ルーターの修理を待つと思いますが……)
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手前から奥に進むにつれてきつくなるように加工します。しまり勾配といって2~3/1000溝を狭くします。
手前の幅が80mmとすると、奥は0.16~0.24mm狭くすることになります。数字にすると、非常にミクロな世界ですね。実際はそんなスミが見えるわけないので、蟻桟を入れてみて感覚にたよるのみです。
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これ以上はどれだけ玄翁や木槌で叩き込んでも入りません。あとはクランプでゆっくりと「ギリギリッ、バリバリッ」っと入れます。
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最後まで入れる前に仕上げ削りをしておきます。
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直接、足が触れても痛くないようにトリマで角を丸めます。
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写真の通り、角が丸くなりました。足が角に触れても痛くありません。
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最後に水拭きをして乾燥を待ちます。
加工途中でどうしても小さな凹みが生じるので水分で膨らませペーパーを軽くあてます。吸い付き蟻桟の加工後に仕上げ削りをすると蟻がゆるくなるので溝の加工前に天板の鉋での仕上げ削りは済ませています。
ペーパーはあくまでも鉋まくらや、ほんの少しの凸を削り取るのと、表面にキズをつけるためだけの目的で、天板表面を平らにすることは出来ません。
番手の荒いペーパーを使用したり、しつこくペーパーをあてると柔らかい部分だけ削れて逆にでこぼこになります。特に柔らかい材料だとそうなります。なので鉋は必須だと思うのですが、鉋を使わない家具屋さんもたくさんおられるようです……。楽しいんですけどね、鉋。
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最後に気合を入れて吸い付き蟻桟を入れます。
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吸い付き蟻桟の溝の始まり部分を埋めます。
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アクセントにもなるので個人的に好きです。
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天板を表側にひっくり返して(重いのでぎっくり腰注意!)、耳を仕上げます。
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一気にベルトサンダーで仕上げれば一瞬で終るのですが自然な状態を残したいので、今回は鑿(のみ)と小刀で時間をかけて仕上げます。
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足の部分の加工に入ります。
バンドソーで荒く切り取ります。
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テンプレートをあててルーターで仕上げます。
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加工を済ませたものを仮組みしてみます。
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微調整をするところをチェックします。
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天板の加工を全て終らせてオイルを塗布します。
今回は、撥水性のあるタイプのオイルを塗布します。ドイツ製のオスモオイルです。
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足の部分です。あぐらをかいて座っても足が邪魔にならないようにアールにしました。
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ゆったりと座れます。
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2回目のオイルを塗布し乾燥を待ち磨きます。
柔らかい布で艶をだします。ウレタン塗装のような塗膜の艶ではなく自然な艶です。特に桜は繊維が緻密なのですばらしい艶が出て肌触りもすばらしいです。
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各パーツも磨いて艶をだします。
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最後にパーツ全てを組み上げて天板を乗せて終了です。